『魚たちの離宮』長野 まゆみ(河出文庫) ’06 3/18

評価;A

今までいくつかの長野作品を読んできましたが、この作品が一番好きかも!
透明で静かで涼しくてちょっと怖いこの雰囲気大好き!!
とか言いつつオチ(ラスト)がわかってなかったりするんですが。(笑)

以下ちょっとネタバレなような気がします。
お気を付けください。

さてさて、不思議な夏宿が死んだ理由。
・市郎が蛍狩りに遅れたから
・弥彦曰く、ピアノ教師が夏宿を池に突き落としたから
・市郎曰く、弥彦が夏夜を池に突き落としたから
これらを踏まえた上で、夏宿が死んだ理由を検証してみる。

一、ピアノ教師が殺した。
弥彦からの「直接見た」という証言があるから、これもありうるけど、
主人公である市郎が最後の最後に「弥彦が夏宿を池に落とした」と
言っていることから、弥彦説の方が有力であると思われる。

二、弥彦が殺した。
しかし、弥彦本人に夏宿を殺す理由は見受けられない。
弥彦はピアノ教師に洗脳され、自分が夏宿を池に落とす実行犯に
なったにも関わらず、それはピアノ教師がしたことだと思いこんでいるのか。
(ただしこの説の場合、ピアノ教師のメリットは謎)
または弥彦がピアノ教師と同様の狂気じみた愛を兄に抱いていて、
殺すことで兄を手に入れたかったのか。
ピアノ教師と弥彦の利害が一致した。
そのためピアノ教師につけいられ(洗脳され)、実行犯になったか。

三、二人が間接的に夏宿を殺した。
ピアノ教師は夏宿にストーカーのようにしつこくつきまとっていた。
夏宿にはそれが苦痛だった。
しかし弟は、ピアノ教師に洗脳され、ピアノ教師の手先(?)になって
夏宿に嫌がらせ(弥彦本人はそうは思っていない)をする。
例の夜、味方である市郎はやって来ない。
夏宿はどうしようもないところまで追いつめられて、自分から池に入った。
直接ではないけれど、間接的にピアノ教師と弥彦が夏宿を
殺したことにはなる。
しかしこの場合、市郎にも夏宿を助けられなかった罪が存在する。
だから、市郎の最後の台詞が、
「夏宿を池に落としたのは僕なんだ。」になる可能性高し。
それが、弥彦に限定されている。

二の後半の説が有力かと私は思うけれども、さてどうだろう・・・?

読解困難な作品ですが、考えれば考えるほど面白い作品でもある。
とにかくこの雰囲気が好きです。
あ、でも夏の夜に読むのにはちょっと怖いかも。(笑)

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