アンキパン物語

2008年1月25日
アンキパン物語
日記の下書きの中から「アンキパン物語」が出てきたので、ちゃんと書いて今回出します。
2007年7月の大学の国語科指導法の授業で、ドラえもんのひみつ道具「アンキパン」を使って物語を作るという課題があったのです。その時に私が作った物語が意外とみなさんに好評だったので、「よし、日記のネタにしよう」と置いておいたものでした。
物語とは言え、本当に1時間半の授業中に書くものですから(しかもその日は物語執筆以外にも作業がありましたし)本格的なものではなく、ただ短いあらすじのようなものでも、漫画でも良かったのです。

授業を受けていたのは50人ぐらいだと思いますが、その中から30人ぐらいの物語が抜粋されてプリント配布されました。他の学生は、アンキパンに頼りすぎて破滅する人の物語や、老人のボケ防止に役立てる物語や、実は精力増強剤で子孫繁栄、少子化社会が救われたという物語など、それぞれ個性的な物語を書いていました。

アンキパンとは、『ドラえもん』「テストにアンキパン」(てんとう虫コミックス2巻に収録)、1979年放送アニメ『ドラえもん』「テストにアンキパン」、1992年放送アニメ『ドラえもん』「アンキパン」に登場するひみつ道具です。
スライスした食パンを模した道具で、ノートや本のページに重ね、内容をパンにコピーして食べるとその内容が確実に暗記できるけれども、スライス1切れにつき暗記できる量(せいぜい1切れに教科書1ページ程度)が限られ、大量のページを暗記できないことや、暗記した内容が体内に取り込まれることはなく、排泄によって効果がなくなるという欠点があります。

この本来の特性も、物語を作る際に必要程度に脚色してもいいという決まりでした。アンキパンがアンキパンである特性、つまり「食パン(アンキパン)にコピーしたものを食べると、そのコピーした内容が覚えられる」ということさえ押さえていれば、後は自由なのです。
ということで、私も恋愛、もしくは友情をテーマに、少し本来とは違うアンキパンの使い方を物語にしてみました。

以下本文です。

きみに世界を見せたい。
世界は光に溢れているのだと。

「空は私の目の色と同じって本当? それは海の色に似ているというけれど」
きみは悲嘆に暮れることはない。
生まれつき目が見えなかろうと、死が身体をむしばんでいようと。

「何?」
新しく開発したパンだよ。写したものをすべて記憶できるんだ。
きみが知らない世界の色もわかるんだ。

「ああ、きれい」
きみは涙を流して目をつぶった。その目が開くことは二度となかった。

その後そのパンは女性には効能がないことが判明した。
彼女はいったい何を見た? そして何故涙した?


この物語を書く作業に取り掛かったのが終了時間ぎりぎりで、「ぎゃー!どうしよう!なんも案が浮かばへん・・・!!!どうしよう、どうしようっ!!?」と一人焦りに焦っていました。だから物語というか、物語のダイジェストみたくなりました。(それを言い訳と言う)
最後の「女性には効能がないことが判明した」というのもことごとく説明口調すぎてすごく気に入らないし、その前の「写したものをすべて記憶できる」というのも、読者が授業を受けていてアンキパンというものがどういうものなのか知っていること前提で、投げやりになっているのも明らか。かといって、どう直せば良いのかもわからないのでこのまま出す。

写したものを暗記できるということは、そのまま文面を写真のように脳内に送り込むことができるのか?ということは、写真をアンキパンで写したらその風景も伝えられるんじゃないの?という結論に至り、こんな話になりました。この物語でアンキパンに写しているのは写真です。イメージとしては、港から撮った海と空、みたいな。語り手はもちろん男性で、しかも科学者?医者?です。「彼女」は今にも死にそうな女性で、男性とは古い付き合い。ここに恋愛感情があろうとなかろうと、相手を大切に思っていることには変わりはないんです。「何故涙した」のかは想像いただくとして。

「彼女」の目が見えないという設定は某トイレに流された魔王の前世の人から拝借。(ついでに目が青いというのも少し)
語り手のモデルは某ハリウッド俳優S.Bさん。彼が「島」(要英訳)という映画で演じたメリック博士(の裏の顔)を想像して。
「彼女」のモデルもいるけれどこれは書くのは少し憚られるので、書きません。あたりまえですが、私ではありません。でも一部の人が「ん?あの人?」と思う人に間違いはないはずです。
ちなみに今回は宝塚とはまったく関係がありません。

こんな邪念を含めた作品ですが、まぁ、たぶん一番最初に載せられていたこともあると思うのですが、意外にも評価をいただきました。後日私の作品について書いてくださった感想によると、

「短い作品でありながら、上手に話がまとめられており、また読者の想像の余地が適度に残されている作品だと感じました。語り手が一人称であることから、語り手の女性に対する気持ちが優しく、また切なく伝わってきて、とても感動しました。冒頭の“きみに〜溢れているんだと”と最後の“彼女〜涙した?”が読者の想像をかきたてているように思います。語り手が見せたかった世界を彼女は見ることができなかった。それでも彼女は“ああきれい”とつぶやいて、涙を流す。語り手も読者も彼女が何故そのような行動に出たのかは想像する他ありません。けれど、この優しい文体の作品から、また冒頭文から、彼女が目には見えない“光”を感じたのではないかということが読み取れるように思います。彼女の死に顔について書かれてはいませんが、涙を流しつつも、きっと静かで幸せそうなものだったのではないかと感じました。文章の構成、また、文章全体に流れる雰囲気がとてもきれいな作品だと思いました。」
「短い文章の中にしっかりとしたストーリーが組み込まれていて表現が上手だと思った。アンキパンについての前提知識のあるなしに関わらず、物語の中に無理なく入っていける。アンキパンを記憶として用いるのではなく、脳内に直接伝達する道具と設定していることもおもしろい。アンキパンにスポットを当てるのではなく、女性の心情を描いている
のが印象的だった。」
「全部読んだ中で、一番印象に強く残った。短い文の中で「アンキパン」が与える効力、2人の人物像が想像できるつくりになっている。また、最後が問いかけで終わっていて、その作品自体からの発問があり、考えるきっかけとなっている。流れもスムーズでとても読みやすい文章だと思いました。」

とのこと。もう本当にありがとうございますです。全員分の感想が載せられたわけではないのですが、載せられているものの中でこれだけ書いてくださっただけで私には身に余る光栄でした。

ところで、暗記ものの試験前になると本当に毎回毎回アンキパンが欲しくなります。この間なんて1800字暗記したんですよ・・・。大学入って今までで一番多い字数だったと思います。
誰か本当にこの画期的なひみつ道具を現実化してコンビニに置けるぐらいにしてほしいです。
私は理科が苦手なので無理です。
・・・あ、でもその前にタイムマシンが欲しいです。

そういえばたかこさんもアンキパン欲しがってたなぁ・・・。

コメント

最新の日記 一覧

<<  2025年7月  >>
293012345
6789101112
13141516171819
20212223242526
272829303112

お気に入り日記の更新

日記内を検索